インタビュー

シンコーラミ工業株式会社 代表取締役 社長 河原﨑哲哉 【前編】

 
 
◆ まずは簡単に自己紹介をお願いします。
シンコーラミ工業株式会社 代表取締役社長の河原﨑哲哉です。
「どんなタイプ」ですか?えー…“チャライ”かなぁ(笑)
まぁ、誰にでも分け隔てなく(年上でも年下でも、同じ経営者でも先輩経営者でも)仲良くしているタイプです。 さっき言った“チャライ”というのは“良い意味”と“悪い意味”がありますが『良い意味』でよく言われます(笑) そういう事を言ってくれるような近い存在の仲間が多いので、仲間には恵まれているなとは思います。 “明るい”“明朗快活”などもよく言われますし、“人生、笑顔が一番”だと思っているので、僕自身は何でもかんでも楽しみたいと思っています。 真面目なところはしっかり真面目にやりますし、ふざけるところはふざけるし、そういうON/OFFを持ってるタイプです。

◆ どんな事業をされていますか?
ラミネート加工業です。
ラミネートには製造方法が何種類かあるのですが、その中で弊社が行っているのは【エクストリュージョンという押し出しラミネート】というものです。
“押し出しラミネート”というのは、石油化学製品の樹脂“ポリエチレン”や“ポリプロピレン”などの原料を熱で溶かして薄いフィルムにし、そのフィルムと様々な素材の貼り合わせをすることによって、付加価値の付いた複合体を作るという仕事です。 分かりやすく説明しますと、ティッシュペーパーやトイレットペーパー等の身近な紙は凄く水を吸う素材ですが、フィルムというのは基本的には水を通さない。
この2つの素材を1つにすると『片方は吸水する素材、片方は防水する素材』になります。 例えば、病院でこのシートを“フィルム”の方を下にして敷いて、その上で手術や検診などを行うと、薬品や血液などが零れても吸水する素材が吸ってくれる。 裏側はフィルムだから検診用の台やベッドなどは汚れない。そのシートを使い捨てで病院で使っていただく。(実際、こういったメディカル関係の仕事が6割~7割を占めています) 『フィルムを何かに貼り合わせすることによって、付加価値の付いた複合体を作る』というのが弊社の加工です。 あとは、日用雑貨、家庭雑貨、食品の包材、建材、自動車の関係…様々な分野に進出しています。

――― ペットシーツも作られているとHPに書かれていましたがあれも複合素材ですか?
そうです。ただ、あれはラミネートじゃないんですよ。完全なペットシーツを作るラインです。
元々弊社は材木屋の関係で、下駄屋さんから始まっているんです。それから吸水体の仕事をやろうと思い、立ち上がったのがシンコーラミの前身の『パール紙工』という会社なんです。 なので名刺にも書いてあるとおり、弊社は今“パールグループ”となっています。 この『パール紙工』という会社は生理用ナプキンやペットシーツなどを作っていました。 その機械は、ペットシーツなどの吸水体を作る仕事しかできないので、他への展開がなかなか難しかったんです。 “これじゃ面白くない”“何か新しい事業を始めよう”と思った時、ペットシーツの裏側に防水の素材(フィルム)に着目し、「このフィルムの加工をしよう」といって立ち上げたのがこの『シンコーラミ』です。 “新しくおこす(新興)”という意味の“シンコーラミ”。 また、創業者である先代の社長(現会長)の名前が信幸というんですよ。 “信じる幸せ”読み方変えると『しんこう』それで『シンコーラミ』。 そして今、僕の息子が“心煌(こうか)”というのですが、読み方変えると『しんこう』(笑) これは全然余談ですけどね(笑) この『シンコーラミ』を立ち上げて、パール紙工と同じ経営者が経営する同族会社(それぞれが独立した会社)だったんですが、この2社の間でも取引が非常に増えてきたので、合併しようという事になり2003年に合併して名前を『シンコーラミ工業』と一本化したというのが、今までの大まかな沿革ですね。 だから、ペットシーツは完全別工場で、ラミとは全然違う所での一部。日用雑貨というジャンルの加工をしているという現状です。

◆ 子供の頃の夢は何でしたか?
サッカーのプロ選手です。
日本代表としてワールドカップで優勝する事が夢でしたね。
サッカーは小さい頃からやっていて、そこそこの成績を残していました。それぐらい一生懸命やっていたんです。
小学校の時はリアル“キャプテン翼”ですよ(笑)
だから『サッカーの選手になってワールドカップに出て優勝したい!』と思っていました。 当時はまだ“プロ”も無い様な時代でしたけど(笑)
でも、それが夢でした。
…だけど、中学に行って現実が見えてきたんです。
僕は二代目ですけど、中学の時に『この会社を継ぎたい』って父に言いましたね。
――― 中学の時点で、会社を継ぎたいと仰ったんですか?
言いました。…僕、小学校の時は文字通り“神童”だったんですよ。成績“オール5”でしたから(笑) 僕らが子供の頃『市内陸上競技大会』というのがあって、各小学校の“陸上競技のトップ”が集まって市内で一番を決める大会だったんですが、僕はそれに長距離で出場し、ぶっちぎりで一位でした。 それに加えて小学校4年生~6年生までマラソン大会でずっと1番でしたし、短距離走の速さも学校の中で1,2位を争う速さで、更にサッカーも結果を残していて。 成績も良く、児童会長などもやりました。本当に“神童”でしたよ(笑) だけど、その“神童”の小学生が中学に入ったら…。 中学って色んな刺激があるじゃないですか(笑) どんどん悪い方へ行っちゃって(笑) そこで現実が見えてきました。 中学の時のサッカー部は顧問の先生が居たのですけど、嫌々やっているサッカーの経験が無い先生だったので、自分たちで勝手に練習メニューを組んで練習していました。 それでも良いメンバーが揃っていたので、結果は残していたんですが、ある程度サッカーに限界が見えてきました。 現実的に僕の親父の背中を見ていて『あぁ、経営者になりたいな』って思いました。 それまでは僕の親父も「サッカーやれやれ」「プロ?なれなれ」「ワールドカップ行け行け」って言っていたのですが、高校進学する時に「お前将来どうすんだ?」と言われて僕が「親父の跡継ぎたい」と言ったら「だったらあの高校行け。あぁしろ、こうしろ。大学に行け」などのある程度の課題を与えられました。

――― 先代様は“やりたいこと”を応援してくださっていたのですね。
そうですね。だから子供の頃の夢はサッカーだけでした。それから、経営者が夢になりました。
…今だから僕の両親も言うのですが、僕が父に「家業を継ぎたい」と言って、父が「わかった」と受けてから、僕がその席を外れた後に会長(先代)は「はい。俺の勝ち」と言ったそうです。
『俺から“継いでくれ”と言ったんじゃない。息子の方から“継ぎたい”って言わせた』と。
その話を聞いていた僕は、息子の名前を“心煌(こうか)”読み方変えると“しんこう”になるようにしました。 やっぱり、僕も息子に継いでもらいたい気持ちはあります。 だけど『息子から「継ぎたい」って言ってもらえるような経営者であり、親父になりたい』と思ってやっています。まぁ、今の所どうなるか分からないですけどね。まだ(息子が)小さいので。

◆ 会社を引き継がれたきっかけはなんですか?
金持ちになりたいからですよね(笑) 人より良い生活をしたいからでしょう!(笑) いや、とっかかりはそうですよ。だって、(家業を継ぐと)決めた時はまだ中学生ですから。 やっぱり人より良い生活したいし、なんか社長って格好良い。そんなものですよ。本当のきっかけはそれです(笑)
…でも実際に会社に入って、現場から叩き上げで全部の部署(3交代業務や営業など全て)をやった今では変わりました。『金持ちになりたい』とか『人より良い生活がしたい』という気持ちは…根底にはありますけど(笑) 経営者なのでその分苦労しますし、借金も作るし、責任っていうのもありますから。
でも、今の一番は『従業員の幸せ』と『従業員のその家族の幸せ』と『地域への貢献』なんです。これは絶対なんですよ。 僕もこういうキャラなので、会社のfacebook見てもらうと分かるんですけど、会社の中の雰囲気も“良い意味のアホ”が多いんです(笑)
会社のイベントも、なるべくみんなの意見を吸い上げて企画してやっていますが、凄く盛り上がるんです。 そういうイベントに奥さんや旦那さん、お子さんといった“みんなの家族”に来てもらって、シンコーラミというものを知ってもらう。 僕という人間を知ってもらう。こういう活動がみんなの幸せになっているので、今は会社の離職率も凄く低いです。 とにかく、やってきたことに後悔はないし、良かったと思います。 逆にこれらをやらずに「会社経営者だから金持ちになりたい」を言う気持ちでずーっときていたらダメですよ。

だから僕はなるべく従業員に還元していこうと思っています。 「会社に利益が出たらみんなに還元するよ」と言って“決算賞与”という形で渡したりするのですが、それも振込じゃなくて現金でお金を渡したりします。 現金って嬉しいじゃないですか。奥さんや旦那さんにばれないように?(笑) 自分の小遣いになるわけじゃないですか(笑) 真面目な人は奥さんや旦那さんにちゃんと渡すっていうの人もいます。 でも女性スタッフ(旦那さん・お子さんがいる人たち)に「このお金どうするの?旦那さんに正直に言う?」って聞いたら「いえ、言いません」って(笑) みんな、そっと懐に入れるんですよね(笑) 給与振込って今はもうみんな銀行振り込みですよ。その方が楽だし間違いないですから。 それを現金で渡すってなると、会社の役員みんなが会議室に集まって、お金を数えて封筒に入れて…というのを100人分やるわけです。 そういう手間をかけることによって(ほんのちょっとしたことに気を利かせるだけで)同じ金額が渡されるにしても、従業員もみんな喜んでくれるので、そういう活動が重要だなって思います。

――― 従業員の事を考えてくださる社長だから、会社の雰囲気が良くなり離職率が下がるんですね。
まぁ僕が“チャライ”からね(笑) 従業員のみんなと“近い距離でいたいな”というのはずっと心にあるんです。 だから、現場に入ってみんなに話しかけたり、お昼をみんなで一緒に食べたり。何かしらみんなとの交流を図る様にはしたいなって思ってやっています。 そういう交流で会社の中を知っていってほしいのです。 会社のHPってあくまでお客さん向けなのですが、“会社の雰囲気”を知ってもらう為のツールが、例えば今回の“僕のインタビュー”であったりとか、 無料で使える“facebook”とかなんですよね。 最近求人を出して面接に来てくれる方の8割9割近くは『会社のfacebookを見て「なんかすごく良さそうな会社」「みんな仲良さそうな会社」という印象を持ったので面接に来た』と言ってくれるんですよ。
今、すごく人材不足でしょ?『どうやって人材を確保するか』ということに、どこの企業も躍起になっているじゃないですか。 だからこそ今はこういうツール(facebookなど)を使わないと損ですからね。 この前も会社で地引網をやりまして、一般的な会社で言うと【弊社に勤めている旦那さんが、奥さん・お子さんを連れてくる】というのは、まぁ有り得る話ですよね? でも【女性が働いていて、旦那さんと子供を連れてくる】イベントってあんまり無いんじゃないかなって、僕は思うんですね。 うちの従業員の女性は旦那さんも連れて参加します。
――― それだけ旦那様も参加しやすい環境が整っているという事ですね。
まだまだですけどね。そういうイベントの参加率をもっともっと高めていかなきゃなと思っています。 まぁ、でもそこは強制するものではないので。
それだけ楽しんでやっているイベントの中でも、特に“新年会”は本当に会社の全員が出席します。 僕が結構良い景品を用意しますし。うちの会社の新年会の凄い所は1次会2次会3次会…4次会まで行くんですよ(笑) お金は全部会社もちなので、僕はお金を払わなきゃいけないから4次会まで全部出るんですけど、スタートから12時間飲みっ放しなのでみんなわーってなっていて(笑) 基本的に僕は、派遣さんと社員さんの区別なく、分け隔てなくやっているので、1次会では派遣さんも全員呼んで社内だけで100人以上、グループ会社まで入れると120人くらいの人が来ますね。

…お客さんは呼びません(笑) お客さんを呼んでしまうと僕らが気を遣ってしまうので。でも協力会社さんであれば僕らもふざけられる(笑) ということで、1次会にグループ会社含めて全部で100人以上来て、2次会で半分以上来るかな?3次会で30~40人来て、4次会で最後みんなへべれけなんで、15人くらいに減ります。 でも、そこまでみんなで「社長、次行こう次行こう」って言って残ってくれるのが、会社の雰囲気かな?と思っています。 だからイベントの時でも雰囲気は良い。バカが多いからね(笑) これに僕がいつまで付き合えるのか…(笑) いずれシンドくなってきますよ(笑) あと向こう10年位は行けるでしょうけどね。 今度息子が入ってきたら、息子がちゃんと付き合えるように「2次会までは俺も出るよ。3次会、4次会はもう行かないから“お前が仕切ってこい”」と言って、いずれ渡していくんだろうなって思います。 まぁ、まだわからないですけどね。