インタビュー

富士宮通運株式会社 代表取締役 社長 鈴木伸一 【後編】

   
◆ 富士宮通運株式会社を経営していく中で特に印象に残っているエピソードはありますか?
南陵に引っ越してきた時の“最初の3か月間”が特に印象に残っていますね。
新しい工場が完成したので来てみたら…何と!仕事が何も無い!工場も全然稼動してなくて。 …あるものは何かわかります?多大な、借金!(笑) 本当に膨大な額の借金だけがあったという、素晴らしい出会いだったね(笑) 倉庫で800万、工場で800万。計1600万くらい毎月赤字でした。
それなのに『このままだと倒産するんだろうな』って、誰も気が付いてくれない。自己シュミレーションで試算すると半年で危ない…。 だもんで、どうしたらいいかな?と。 当時は土日無し、睡眠時間を削って再生方法を考えていました。

――― 実際、どのように“再生”させたのでしょうか?
基本的には“逆転の発想”で、悪い所を全部挙げさせたんですよ。 『富士宮通運の悪い所』と『南陵来て悪い所』をずーっと全部挙げてみて、『じゃ、良い所あるの?』って聞いたら1つもないんですよね。 それが、今は全く逆になっているんです。
『こんな高い、辺鄙なところに来てどうするんだ』と言ったら『ダウンタウンよりも3,4度低い』と。倉庫としては温度が低い方が良いんです。 『こんな奥へきてどうするんだ』って言ったら、裏の通りが信号の無い通りで、御殿場まですぐに行けるっていうメリットとかね。 幸いにしてここ(南陵)は雪が積もらない地域なんですよね。 それで、『こんなとんでもない、今まで類を見ない、こう出鱈目な倉庫群(敷地内に道路や通路が多くある倉庫)』をよく作ったなと思って(笑) というのもね?道路って坪数に入るんですよ。つまり道路がなければ保管できるじゃないですか。 だから、お金がかかった割には保管スペースが全部死んじゃってるんです。 そうなると800坪(道路分)くらい稼がなきゃいけなくて、工夫しました。 横には広げられないから上へ上げる。そうしたら“製造をやる”には“雨に濡れない”という長所が出てきたんですね。 『スペースは狭いけど、雨には濡れない』『横はもう限界だから、縦に上げる』 …まぁ色々と考えていた時が一番面白かったですね。今はある程度軌道に乗っちゃったので。軌道に乗っちゃうとあんまり面白くないです(笑)
 

◆ 富士宮通運がここまで成長できた理由はどんなところにありますか?
みんながPassion,Mission,Action.でやってくれている事と、 我々にとって一番重要な人たち(ワーカーさん・作業してくれてる女性)が一生懸命やってくれているところに成功の秘訣があるのかなと思っています。
まぁ、まだ途中なので、成功と言えるかどうか。富士山で言うとまだ“一合目”なので(笑)
だから今、日本全国から中途採用で次の世代のリーダー(システムのプロやケミカルのプロなど)を採用しています。
とにかく、みんなが一生懸命頑張ってくれたからこそ、ここまで成長できたのだと思います。
◆ 今後どのような人と共に働いていきたいですか?
新卒を今度は高校生を中心に20人くらいずつ、出来れば採っていきたいです。
次の世代を育てなければいけないから『次の世代を背負って立つ、若くて有能な人たち』と仕事をしたいと思っています。 なかなかいないですけどね(笑) まぁ、元からそんな優秀な人っていうのは無理ですし、僕たちも育ててもらっているので、そういう人たちを“育てていきたい”と思っています。 地域社会も含めて、それ(次世代の育成)が50代過ぎた人たちの仕事かなと思うんですよね。
あとは中途採用を積極化(優秀な人を採用)して、持っている能力を引き出してやりたい・引伸ばしてやりたいです。 潜在能力のある人は使い方によって全然違うし、生き生きとしてくるんでね。 今の従業員もまだまだやりたいことがいっぱいあると思うので、やってくれればいいと思います。 その為にはメンバーがいないとダメ!仕事って必ず成功できるメンバーと組まないとダメです。 自分たちと同じ方向を向いて、素直な人とやっていった方がいいですよね。 あとはやっぱり、いつまでも勉強している人間じゃないとダメですね。勉強に苦を持っちゃダメです。 歳を取れば取るほど勉強しなきゃダメ。なぜって老化で頭が悪くなるから(笑) 読むとかそういう意味じゃなくて、いろんなことを考えたりしていかないと、20代の3倍-4倍の勉強をしないと、若い人たちに負けてくると思いますよ。 色んな書物を読んだり、いろんな映画を観たり、色んな音楽を聴いたり。…チェロを聴いたり、バイオリン聴いたり、ピアノを聴いたりね(笑)

◆ 就活中の方々に何かアドバイスがあれば教えてください。
『自分のやりたい仕事は自分で見つけなさい』『自分の仕事とか人生は自分で勝ち取ってください』ですね。他人事にしてはいけないという事。
高校生や大学生が難しいのは“やりたいと思うことが見つからない”というのはあると思う。だけど、やってみればいい。 やりたいと思っていない仕事の中でも“面白さ”ってあるので、発見していくっていうのもまた仕事の捉え方としていいのかなと思っています。
まぁ最終的には仕事をエンジョイできるような気持ちがないと、大きな仕事ってできないと思うんです。 ツライツライと思っていると辛くなっちゃうから。

“仕事”っていうのは“仕事と思わない”くらいになると『本当の仕事』なんだろうなと思うよ。 食事してると“美味しい”、美味しいもの食べると“嬉しく”なっちゃう。つまりはそういう事(笑) そうすると『仕事って言っても仕事じゃなくなっちゃう』じゃん。 だから、是非自分のやりたい仕事じゃなくて、今は良いと思わなくても、とにかく何でもいいから一回トライしてみたらどうかな? チャレンジしてみたらどうかな? そうすると意外にフォークリフト乗っても“面白いなぁ”とかあると思うんだよね。 『この箱をこっち移すのに、どうやったら早く運べるかな?』って考えるのが、もしかしたら面白いかもしれない。 だからどんなことでも楽しみってあるので、楽しくやってもらいたいなと思います。
◆ 従業員から見た「鈴木社長」はどんな方ですか?
鈴木社長になってから、楽しいです。(H.H様)
『逆転の発想』富士宮通運が再生した時も“弱み”だったところを“セールスポイント”に変えて、お客様にセールスさせていただいて、色んなお客様を獲得できましたし、 昔の富士宮通運だったらとても土俵に乗れない・話を聞いてもらえないようなお客さんにセールスをかけて、日本でも有数な企業さんと取引ができるようになったので。
『バランス経営』一つの大きな企業に依存してしまうと、そのお客さんの機嫌を損ねちゃう・横を向かれちゃうと大怪我するのと一緒なので、 そこの比重を下げて他のお客さんを増やせば利益も上がるし、うちの儲けも多くなります。そういうお客さんの選別ができるようになった。そこまでの体力を付けられるようになったのは、全て鈴木社長のおかげなんです。
そしてずっと会社にいて『今、思うこと』は、鈴木社長が社長に就任されてから、事務所の雰囲気が変わりましたよね。 来社されるお客さんも凄く快く来ていただけて、帰っていただける。それは、鈴木社長の明るく元気なお人柄があってこそだと思います。(M.S様)
◆ 鈴木社長から従業員の方に一言お願います。
30年-50年は十分大丈夫な会社(ビジネスモデル)にしているので、後は人材がどうかっていう所が一番の決め手ですよね。 人がダメになっちゃうとダメなので。
中にいる人たちが頭の良い人たちなんだけど、頭が固くなって、物事が言えないような環境になると会社って急に老化するものなんです。 そうならないようにいつまでも活性化してね。若い考え方で。歳を取っても、血管年齢が若い人たちで(笑) 頑張ってもらいたいなと思ってます。
まぁ、今の調子でいけば安心なので、安心して精一杯働いてくれればいいのかな。 休みは休む!残業は基本的にしない!五時過ぎは、もう飲む!(笑) そういう風に切り分けてね、やっていけばいいのかなと思いますね。

◆ 今後の目標は何ですか?
今期が大体売上で20億円超えると思うので、計画通りいっています。 経常利益で一応、1億5千万円くらいが視野に入ってきたのでこれをクリアしたら、10年以内に富士宮発の会社で100億円の企業にしたいな、と思っています。 売上の5倍。経常利益10倍。そうなれるような会社の…基礎だよね。僕がずっといられるわけじゃないので、この間に誰かと交代しなきゃいけないので(笑) 計画通りいくと平成35年に50億。経常利益5億。これくらいまではいられるのかな? まぁ、そういった会社になれればいいのかなぁと思っています(笑)
あと、これは一番の夢なんだけど、もう一回『シャトー・ペトリュスとロマネコンティのビンテージ物を飲みたいな』と(笑) 一回だけ各一杯ずつは飲んだことがあるんですけど…なかなか飲めない!(笑) 1杯で軽が買えちゃうので(笑) そういうのを…残り少ない人生だから(笑) やっぱり美味しいですよ。違いますよねぇ。飲んでみると分かります(笑) 慣れてない人には美味しくないかもしれないけど、慣れてる人には美味しいんですよねぇ。 まぁ、それが夢ですね。…ロマネコンティは飲めるかもしれないな(笑)
◆ あなたにとって「社長」とは?
『人は利によって動く、会社組織は徳によって動く』
人は自分の利によって必ず、99.9%動くものなんですよ。でも会社とか組織っていうのは利だけで動いてはいけないし、動くべきではないです。 やっぱり徳ですよね。社会徳とか会社の徳とか人徳とか。『歴史の審判に耐えうる、正々堂々の経営』とか『共生(ともいき)』っていうポリシーは基本的にはやっぱり徳によって動かすのでね。 “第五水準の経営者”って『利他の概念』なので、自分の為に何々しようじゃなくて、例えば会社の為とか、社会の為に何々しようという考え方。 経営者の中では結構多いと思いますよ。そういった考え方じゃないと潰れちゃいますから。
『自分の事じゃなくて、従業員の事を考えましょう。周りの事を考えましょう。株主の事を考えましょう。お客さんの事を考えましょう』
まぁ、まだ修行中なんですけど、“第五水準の経営者”となる人になりたいなと。“社長とは”というか、そういう社長になりたいです。
 
鈴木 伸一 (すずき しんいち)
富士宮通運株式会社
代表取締役 社長
◆ インタビュー担当から ◆
今回インタビューをさせていただき『社員想いで“現場改善”など他の人の為に率先して動いてくださる、明るく素敵な社長』という印象が強まりました。
長時間のインタビューにも笑顔で対応してくださった鈴木社長、並びに2名の社員様。 誠にありがとうございました!今後ともぐるっと富士宮 担当として宜しくお願い致します。
写真担当:K.O&M.O / インタビュー担当:M.W