インタビュー

丸山工業株式会社 代表取締役  九川治喜【後編】

 
 
◆ 富士宮で起業された(会社を引き継がれた)きっかけ・理由はどんなことですか?
サラリーマンよりはやりがいが感じられるからですかね。今まではコンピュータ関係の仕事をしていましたが、コンピュータの世界って、せっかく色々覚えても、日進月歩で少し経つとすぐに古くなってしまうんです。何十年も年を取ってまで続けられないんじゃないかなという思いがありましたね。そんな時に父から継がないかっていう話がきたのがきっかけですね。

◆ 経営をされていく中で一番意識されていること・大切にしていることは何ですか?
けじめですかね。仕事するときはする、休むときは休むっていう形ですかね。
――― ONとOFFの切替ですか?
そうですね。(開始の)チャイムが鳴ったらぱっと仕事を始めて一生懸命やる。(休みの)チャイムが鳴ったらぱっと休むという形で。だらだらしゃべって終わっちゃうとかそういうのは嫌いなんです。長電話とかも嫌いですね。そんなこと言って私、話は長いですけどね(苦笑) でもなかなかそれを人に100%押し付けるのは難しいですよね。そうは言っても各作業者の自主性を尊重しつつ、言わなければならないことは言うべきだとは思っています。
◆ 企業を経営していく中で特に印象に残っているエピソードはありますか?
実は以前、ドラマの『下町ロケット』に、弊社の商品が使われたんです(笑) ホームページを見たのか、急に知らない男の人から電話がかかってきたんです。それで『信じてもらえるか分わかりませんが、私TVの仕事をやっていまして、ドラマで使用したいのでパイプが欲しいのですが・・・。』と言われました。初めは怪しいと警戒していましたが、何度かメールでやり取りをしていると本当の話だったんだと分かりました。すると『出来れば明後日までに欲しい』と急に言われまして(苦笑)図面も無しで、電話だけのやりとりで、たまたまそれを製作するための材料や金型などがあったので、なんとか二日で完成させることができました。
――― 二日で納品できたんですか?すごいですね。
社員の皆さんやメーカーさんも手伝ってくれて、そういったいろんな方の協力があったので完成させることができましたね。
――― すごいですね。ちなみにドラマのどこで使われたんですか?
第一シーズンのドラマの方なのですが、『ロケットエンジンの調子が悪いんだ。佃製作所の部品が悪いんじゃないのか?』って疑われて、エンジンを分解してテーブルの上に並べたときの部品の一部として使われましたね。このことがとても印象に残っていますね。 それ以外にも商工フェアに出たことも印象に残っていますね。普段とはまた違う世界を経験することができましたね。
さらに今年は日本テレビで2019年7月6日放送の『THE MUSIC DAY 2019』という番組の中の『嵐にしやがれ』のコーナーのロケでもウチの工場を使っていただきました。テレビでよく見る相葉くんと二宮くんが実際に会社に来たのが今でも信じられませんが、もうこんなことは二度とないでしょう(笑)

◆ 会社の特徴や雰囲気などを教えてください。
普通に汗をかいて物を作るって感じですよ。
――― どのような方が働いていますか?
長く勤められている方もいるし、新しい方もいます。中途の方がメインだけど、未経験者の方がほとんどです。今は新入社員の募集はしていません。教えるのが体制的にまだ弱いので(苦笑)
――― 社長も元々は違う業種で働いていましたよね。
そうですね。コンピュータ・ソフトフェア関係の仕事をしていましたね。大学でも理学部化学科を専攻していましたし。もう今は全然覚えていませんけどね。周期表くらいなら覚えてますけどね。
――― プレスのお仕事って資格とかあるんですか?
私は持っていませんが、資格はありますね。
資格と言えば一つ自慢できる資格があります。『公害防止管理者』といって、国家試験なのですが、これが結構難しいんです。弊社では私を含めて三人がこの資格を持ってるんです。こんな小さな会社でもこれだけは自慢できるんです(笑)
(辺りを見まわして)―――こうして見ると、賞状がたくさんありますね。
やはり品質は大事かなと思い品質管理検定を取りました。商標登録も取りましたね。 弊社では、とにかく必要な資格はなるべく取ろうってことで、会社で取るための費用は負担して取ってもらうことにしてるんです。だから必要な人は結構資格をたくさん持っているんです。事務所のお姉さん達でさえ、フォークリフトの資格を持ってるんですよ。

――― すごい!運転できるんですか?
運転できるし乗ってます。
やはり資格はみんなのモチベーションにも繋がると思います。実際、私自身も繋がりましたしね(笑)

 
◆ 今後どのような人と共に働いていきたいですか?
最近、静岡大学でこのようなお話をさせてもらう機会がありました。そこで、大きな会社に勤めたり公務員もいいけれど、小さな会社でこういったものを開発したりするのもやりがいがあるよっていうお話をさせていただきました。

(楽器らしきものを見つけて)―――これは何ですか?
サンポーニャといいます。首からぶら下げてケーナとセットで使うんです。ケーナのようにマグネシウムでも作れるかなって思って作ってみました。本来現地の方はサンポーニャの音を調整するのに豆を入れて調整するんです。それを弊社ではネジで調整できるように作ってみました。
―――すごい。ネジで調整するんですね!
はい。でも吹いてみたら音がいまいちだったので途中で止めてしまいました。微妙な太さの違いで音が変わってくるのですが、材料として微妙な太さの違いって難しいんです(苦笑)マグネシウムなので重さは軽いんですけどね。
―――ほんとだ。見た目は重そうなのに軽いですね。
鉄で作ったらずしっていう感じですが、マグネシウムだから軽いんです。
―――ねじで調整とかおもしろいですよね。
そうなんですよね。発想はいいと思うのですが、音がいまいちだったので・・・・。
まあ、こんな感じで一緒に新しいものを作っていけるような人と働いていきたいですね。なにしろほぼ私しかやっていませんので(苦笑)
本業が忙しくてあまりこれに時間がかけられないんですよ。
あと、富士宮といえば秋祭りですよね。今年はお祭り関係のある方から声をかけていただき、山車に乗るお囃子の篠笛をマグネシウム合金で試作しています。伝統ある富士宮のお祭りのお囃子をマグネシウムの笛が奏でるなんて、想像するとワクワクします。
◆ 就活中の方々に何かアドバイスがあれば教えてください。
やりがいのある仕事を見つけて欲しいですね。会社の規模とか安定性とか、それもすごく大事だと思いますが、自分の人生にとって何が一番大事なんだろう、何がやりがいがあるのだろうということをじっくりと考えて欲しいですね。
 
◆ 現在のスタッフに一言お願いします。
同じ方向を向いて一緒に頑張りましょう!

◆ あなたにとって「社長」とは?
方向を示す人ですかね。やはり社長というのは、日々、細かいことから大きなことまでの決断力や判断力が必要です。だから、とにかく方向を示すことだと思います。船で言えば船長みたいなものですかね。
―――舵取りってことですか?
そうですね。丸山号の船長です(笑)船長が間違えた方向へ行ってしまうと、タイタニック号ではありませんが、衝突して沈没してしまったりすると思いますので。
―――細かいことから大きなことまでの選択と決断が大事ということですね。
はい。本当に選択の連続だと思います。細かいことはスタッフの方々が段々と判断してくれるようになってきていますので、そのままみんなで同じ方向に向かって進んで行きたいですね。
 
◆ 今後の夢や目標を教えてください。
既存の仕事も大事にやりながら、マグネシウムの分野でもっと幅を広げていきたいですね。せっかくたくさんの縁があり、自分の好きな楽器ということで、非常に私にとって取り組みやすいというか(笑)でもやはり一人では限界がありますので、先程話しに出ました就活生じゃないですけど、一緒にやってくれる人がいたら本当はいいのかなって思いますけどね。
――― ケーナだけでなく他にも創るってことですか?
はい。もっといろいろやりたいですね。実は頭の中にはあれもこれもって色々あるんですけどね(笑)

―――いつかはそれを実現するのが夢であり、目標なのですね。
そうですね。マグネシウムの良さを生かした何かを創りたいですね。せっかく楽器の分野で商標登録を持っているのでそれを生かしたいです。 最近あまりメディアに出ることはないのですが、それでも注文はちょこちょこ入っているのがうれしいです。累計でいくと150~160台くらいですかね。当初の想定に対しては結構世の中に出たかなって思っていますが、もっと『marco』の楽器が世の中に広まってくれればいいなと思っています。そしていつかはマグネシウム楽団なんてやってみたいですね(笑)
 
 

九川 治喜 ( くがわ はるき )
丸山工業株式会社/代表取締役
◆ 会社概要 ◆
所在地  静岡県富士宮市山宮2201-10
TEL  0544-58-4750
設 立  1971年4月
事業内容 プレス加工 パイプ加工 溶接 金型製作 機械加工全般