インタビュー

株式会社旭紙工所 常務取締役・ホーミーコスメティクス株式会社 代表取締役 渡邉美穂【後編】

 
 
◆ 入社をした背景や当時の苦労などありましたら教えてください。
そんなにあまり苦労はしていなくて(笑)実は両親から会社を継いでと言われたことは一度もないんですよ。自分の好きな仕事に就いていいよというか、自分で決めなさいみたいな感じだったので。言われてはいないんですけど、小さい時から父が事業をやっていたので、そういう姿を家で見ていて祖父のことも見ていたので、自然と使命感というか、私の代で潰したくないなっていう思いはありました。 そういうのもあって、弊社の相談役の方がいるんですけど、その方に「そんなうろちょろしてないで早く入れ」って言われて(笑)やる気があるなら少しでも早く会社に入りなさいということで、自分で決めて入社したんです。 入社して初めての全体集会で挨拶した時に、その当時は全部で70人くらいの従業員がいたんですけど、ずらーっと自分の前に並んで、70人っていうとけっこうな人数なので(苦笑) 私、人前に出るのはそんなに緊張しないんですけど、なんですかね、会社に入ってこの人たちの生活が、その周りに家族もいるじゃないですか。いろんな顔が見えてきてしまって、これからこの社員の皆さんの生活をしっかり支えていかなきゃなっていう、そういうプレッシャーはすごく感じて、頑張らないとなって思いました。
――― 会社に入ってから下積みなどはあったんですか?
もう最初から役員として入れてもらって、最初は取締役で。

――― ほんとに最初から、のしかかってくる感じだったんですね。
そうです。けれど逆にそれがいいプレッシャーというか。私、楽観的なところがあるので、最初からそういう、まぁわかっていたのかな(笑)楽観的なので、そういう重しがついてちゃんとやらなければっていう使命感にはすごくなりましたね。すごく社員の皆さんの顔が見えて、今まで感じたことのないプレッシャーでした。ただ楽しいだけじゃなくて、皆さんの生活というか人生がかかっているので、そこがすごくプレッシャーを感じましたね。 あと、やっぱり女性だから、女性で入ってきてまだ23歳くらいだったので。なんていうんですかね、こうちょっと甘くみられるってわけじゃないですけど、外に出て行った時にもちゃんと見てもらえるように、そういう配慮もあって役にはつけてくれているんだなとは思います。
けっこう対外的に外にもどんどん出て行ったんですけど、お客様のところに行ったりとか、どんどん営業とかもしていったので、その時にやっぱり役職が付いているといきなりでもちゃんと会ってくれたりとか、そういう面ではすごく助かりました。
――― 役職に就きながらもどんどん外へ出て行かれるんですね。
そうですね、どんどん出て行きましたね。会社も毎朝、役職者の方と一緒に回って社員の顔をまず覚える、名前を覚える、どんな作業をしているのかっていうのをぐるぐるぐるぐる回って覚えました。自分なりに早く覚えようとは努力しました。

◆ 経営をされていく中で一番意識されていること・大切にしていることは何ですか?
一番大事なのは、ずっともう弊社は安全ですね。安全が第一っていうのでずっとやってきているので。まず安全に作業してもらう。社員の方が安全に作業できなければ良い商品はできないですし、やっぱりそれが大事ですね。弊社は事故がすごく少なく、県からも奨励賞をもらっているんですけど、そういう安全第一でやっています。
――― 起こり得る事故とはどういったものですか?
そうですね、弊社は断裁機で紙をカットするので、手を巻き込んでしまったりとか、足を切断してしまったりとか。やっぱり刃物を使っている会社なので、危険なところもあるんですけれども、安全衛生委員会というのを必ず月に一回、社長、私、産業医の先生と全員参加して、各部署から危険な箇所、少しでも軽度のものでも全部拾い上げて報告していくっていう活動をやっています。そういうところで小さいところから潰していって、大きい重大事故を起こさせないっていうようなことを会社全体で取り組んでいます。
――― 無事故でこれているんですよね。ちゃんと成果がでているんですね。
はい、そうですね。安心して働けないとやっぱり良い製品は作れないので。
 
 
◆ 貴社がここまで成長できた理由はどんなところにありますか?
そうですね、やっぱり生き残っていく会社っていうのは、大きい会社だから良いってものでもないし、資金力がすごくあるから安心ってことでもなくて、変化にちゃんと適応できる会社っていうのが生き残っているなっていうのを感じています。地球上、ちょっと壮大な話になりますが、地球上の歴史を見ていても、ダーウィンの進化論でいうと、恐竜とかっていくら強くても地球環境の変化に対応できなくて絶滅しちゃうじゃないですか。なのでやっぱり環境とかいろんな変化に適応できる、そういうものが最後に残って、人間もいろいろ進化して今に至るじゃないですか。やっぱり変化にちゃんと適応できるものというか、人間もそうですし全体的にいえることだと思うんですけど、企業も変化にちゃんと対応できる会社、柔軟に。

情報をしっかり、最新の情報をキャッチして的確な判断をし柔軟に対応する、そして良い方向に変化するっていうのが大事だと思っていまして、弊社の場合ですと、その場その場の状況を適正に察知して、昔はこうだったから今はダメだとか、そういう固定観念にとらわれずに、今紙から化粧品をやっているみたいに、どんどんどんどん自分たちの持っている財産とか知識経験を活かして次の何かに変えられるっていうのが、私は大事だと思っていて弊社が今日まで生き残ってこれたポイントだったんじゃないかなと思います。これからもそういうふうにしていきたいなと思っていますね。社員の人もよく付いてきてくれたなと思います。みんな反発せずに前向きに、化粧品をやるって言った時も初めてのチャレンジなんですけど、みんな1人1人勉強をして大変ながらも付いてきてくれたっていうのが、弊社の良いところじゃないかなって思います。
―――社員の方たちにも恵まれていたんですね。
そうですね。社長も、私が提案したことに対しても柔軟に聞いてくれて、でも制止するところはしっかり制止してくれて、慎重にことを運んで行ってくれる、否定せずに全部受け入れてくれるっていうところはすごく感謝しています。 コミュニケーションもよく取っていて、商品開発もちゃんと報告をしていますね。

◆ 貴社に関わる人々や地域社会にどのようなプラスの影響を与えていますか?
そうですね、今本当にそんな大それたことはできていなくて、できたらいいなと思いながら頑張っているんですけれど。
まずは今会社で取り組んでいるのは、社員の人が明るく楽しく満足できる、社員から選ばれる会社、地域の人から選ばれる会社っていうのを掲げて頑張っています。 その中でも今女性が働きやすい職場というのを目指していまして、昨年くらいから弊社の総務の女性が『女子会』を開いています。 経営者主体ではなくて社員の方からもっとこうした方がいいとか、こういう会社になったらいいなっていう意見を吸い上げて、そこから優先順位をつけて改善していくっていうような、社員の方が主役といいますか社員主体の活動をしているので、そういったものを徐々に改善して行って、まず会社での過ごし方を改善できるようにしています。
働きやすい職場になることで生産効率とか仕事に対する意欲も上がってくると思うので、それで売上げが上がって利益が出たときにはしっかり還元する。まずは社員に還元して、まだ余剰で余ったら社会に還元するように奉仕活動であったりとか、いろんな地域の活動に参加するとか、そういったことをやっていきたいなというのがあります。
―――富士山やかぐや姫、さくや姫を使っていくことも地域のためになっていくのでは
そうですね。市外の方とかだと、かぐや姫やさくや姫を知らない方も多いので。地元の方はもちろん、コノハナサクヤ姫はさくやちゃんっていうキャラクターがいますし、かぐや姫ももちろん有名なので知っているんですけど、市外の方とか県外の方って全然知らないんです。富士山しか知らないんですよね。富士山、焼きそばとか止まりになっちゃっていて、もっといいものがいっぱいあるのに、ちょっと埋もれちゃっているところがあるので、こういう美に関するものは女性は好きだと思うので、そういうものを、富士・富士宮の地域の良さとして商品を通して発信できたらいいなと思っています。それも貢献になるんですかね(笑)
 
◆ 会社を経営していく中で特に印象に残っているエピソードはありますか?
まだそんなにやってないんですよね (笑)けっこう最近めまぐるしく状況が変わっているので、本当にその場その場のことを一生懸命やっているんですけど。
――― 商品開発していく中でのことなどあれば
本当にとんとんといっちゃっているんですよね (笑)ほんと、高砂さんとか、もうちょっと苦労するかなと思ったんですけど。いきなり行って化粧品を作りたいなんて言ってたので。良い方ばっかりで、「いいですよ」ってすぐ言ってくれたんですよね。
経営をしていく中でですよね...。

―――経営にとらわれず、仕事していく中でのエピソードなど
私は仕事をしていく中で本当に社員の皆さんに感謝ですね。いつも困ったことがあっても、みんな必ず助けてくれるんですよ。なので、本当に社員の方に恵まれてよかったなと思っています。 あとそうですね印象に残っていることというと、お客様がすごく繁忙期で生産が間に合わないって言ってすごく忙しい時があったんです。私が担当していたんですけど、年末年始もやらないといけないっていうような話になって、すごく忙しくて。年始は休むとしても、年末はギリギリまでなんとかやってくれって言われたときに、通常、弊社は年末年始は長期休みを取るんです。みんな休みたいじゃないですか。いろいろ準備もあるじゃないですか、いろんな支度も。 出てくれる人はいないだろうなって思ったんです。なので自分で最後出ようって思って、自分で出て頑張ってやろうって思っていたんですけど、それでも1人1人にお願いしに行ったら出てくれたんですよ。たくさんの社員の方が。

その時に、本当にありがたいなって思って、すごくうれしかったですね。 なんか本当にいろんなピンチはあったんです。でも私悩まない、ポジティブなんて言ってたんですけど、その時に動くんですけど、動いた時に相手の方が反応してくれないと、動いてもやっぱりうまくいかないんですよね。だけど、そういう時に必ずみんなが助けてくれるので、やっぱり社員の皆さんには本当に感謝していますね。 私もけっこういろいろ新しくどんどんやっているので、皆さん付いてきてくれないかなって思うんですけど、みんな嫌々言わず付いてきてくれるので、すごくありがたいなと思いますね。この商品ができたのも本当に社員の皆さんが頑張ってくれているおかげだと思っているので、本当に日々感謝です。
―――会社と一緒に社員の方たちも変化していってくれているんですね。
そうですね、本当にいろいろやってくれますね。
◆ 今後どのような人と共に働いていきたいですか?
そうですね、やっぱり何事にもネガティブではなくて、ピンチはチャンスじゃないですけど、絶対ずっとうまくなんていかないんです。だからピンチになった時に腐らないで頑張ろうっていう、そういう人がいいなと思いますし、やっぱり、私『変化』って言ったんですけど、ピンチがあってもそこで腐らないで、ポジティブにどうやったら改善できるのかっていうような思考の方が変化していけると思うので、そういう方と一緒に働いて、良いモノづくりと言いますか、ちゃんと社会に還元できる仕事をしていきたいなと思っていますね。

◆ 就活中の方々に何かアドバイスがあれば教えてください。
今は会社を選ぶ時に、いろんな情報が出ているので...。
そうですね、私はやはり仕事というのは、人生のけっこうなウェイトを占めることなので重要な選択になるかと思います。良いことも悪いことも両方いろんな経験として自分の幅につながると思うのでどんな会社に入ってもきっと良い経験ができると思いますので皆さん頑張ってください。でも大事なのは必ず自分で見て聞いて自分の意思でしっかりと決めた会社に入ってほしいなと思いますね。親が決めたとか、人から言われたからとかじゃなくて、自分で意思決定する、自分がここに行きたいって心から思ったところに是非行っていただきたいなと思いますね。
◆ 現在のスタッフに一言お願いします。
もう、感謝感謝感謝で (笑)これからもちょっといろいろやるかも知れないですけど、是非付いてきていただいて、一緒に良いものを作れたらなと思っています。
◆ 今後の夢や目標を教えてください。
今後の夢ですね...。
やっぱりちょっと途中でも話をした、今環境問題が重要視されているので、会社の中で指針として環境に良い活動で商品づくりっていうのはどんどんやっていきたいなと思っています。 この『姫ビューティー』を自社ブランドとして育てていきたいっていうのもあるんですけど、富士山って日本の象徴で美しい自然で、美しい自然とエコ、環境を守ることで美しい富士山を守るということに繋がってくると思うので、この商品ブランドをただ地元の発信だけじゃなくてもっと広く考えて、エコな地球環境を守って富士山をきれいに存続する、サステナブルなブランドにしていきたいなとは思っています。夢ですね。 そして、この地元の認知度がさらに高まって、観光客とかエコできれいな街ってどういう街?みたいな感じで訪れる人が、国内でも海外でもいろんな人が来てくれる、人の集まる街になったらいいなと思っています。
 
 

渡邉 美穂 ( わたなべ みほ )
株式会社 旭紙工所/常務取締役
ホーミーコスメティクス 株式会社/代表取締役
◆ 会社概要 ◆
所在地  静岡県富士宮市外神2191-1
TEL  0544-58-2822
設 立  昭和54年(1979年)1月
事業内容 紙加工事業 検品事業 化粧品事業