インタビュー

有限会社 鈴木製作所 代表取締役 鈴木髙史【後編】

 
 
◆ 会社を経営していく中で一番意識されていること・大切にしていることはなんですか?
さっき言った、自分の分を尽くすってことなんですけど、仕事の本質はなんなのかなって考えるんですけどね。
やっぱり同友会で言うところの、経営理念。

一、私達は、スポット溶接の新たな可能性を追求し、独自の加工技術を創造します。
一、私達は、人を育て、世代を継ぎ、あらゆるものを融合させて、地域社会の活性に貢献します。
一、私達は、和を以て貴しとなし、互いに結び励ましあい、あたえられた今を大切にいきぬきます。

 
この「与えられた今」っていうフレーズがあるんですけど、柚野の興徳寺に、松永泰然(まつながたいぜん)さんっていう和尚さんがいらっしゃるんです。僕お寺回りとか結構好きで、震災の時に仕事がなくて暇な時、この辺のお寺ずっと回っていてたまたま行ったら松永さんと縁あって知り合えて。
いろんな話をして、僕の話も今の現状も聞いてくれたんです。でも今の現状はね、偶然ってことはまずないから、人の人生。必ず必然。今あなたがいるのは必然なんだから。だから今の、与えられた今を大切に生きてくださいって言われたんです。それが頭に残っていて、これをみんなで共有したいなと思って。
うちの会社は何が特徴かなって。これはうちの親父の代からあるんですけど、けっこう時間はきっちりしていると思うんですよ。
他の会社を見ていても僕が思うのは、ベルが鳴ると同時に仕事をする。当たり前の事なんだけど、意外とできてないところが多いじゃないですか。
その当たり前のことを、時間ってことを今ってことを大切に一緒に生きようっていう。
やっぱりこつこつやっていくうえでもね、新たな事にもチャレンジしていかなきゃならないし、さっき言った障害者雇用は僕の責務だと思っているし、これも今後とも進めていきたいと思っています。
やはり、仕事を通じてみんな従業員も含めて、人生の本質は全部つながると思うんです。生き方とか。仕事だけじゃなくて、仕事で一生懸命何かの本質をつかめば、いろんなことが逆に見えてくるんじゃないかなと思って、それを一緒にやっていきたいですね。

◆ 今後どのような人と共に働いていきたいですか?
私と一緒に問題意識を持って、気持ちを一緒にしてくれる人。
リーマンショックがあった時に、うち当時40人いたんですよ。40人いて、アルミの事業をちょうどリーマンショックの5年くらい前に立ち上げて、軌道に乗りはじめたころにリーマンショックがあって、仕事がゼロになっちゃった。
雇用調整助成金なんて初めてもらって、自分の保険も全部解約してそれまでつないだけど、数か月すると、もうどうにもならなくなっちゃって。
だからね、その時20人解雇しました。20人解雇するって、けっこうね。1人1人呼んで話しをするんですけど、まぁこんな大変なこと、何より嫌な事だったけど。そんな自分がね、今こんななって偉そうなことを言うのは何かなと思うんだけど、本当に謙虚に生きていかなきゃならないかなって思います。
僕が背負った十字架かもしれないですね。なおさら、会社を潰すわけにいかないしと思います。

それでも何名か残ってくれた人がいたんです。その人たちがいまだに頑張ってくれている。
ここ数年、辞める人はいないですね。新規には障害者の子とか入ってきているけど、退職者はまずいないですね。リーマンショック、震災から始まって、そういうことでは一緒に思いを共有してくれているんじゃないかな。 僕もけっこう厳しいことも言うんですよ。ただ、厳しいこと言うだけじゃなくて、いいところは褒めてやらないとまずいので。
――― 退職者がいないっていうのが答えってことですね。
そうですね。甘いって言われるかもしれないですけど。
僕、さっき時間の話をしましたけど、ぱっぱっぱっぱって定時で終われば定時で終わりますから。予定は早めに言うんです。 僕も現場をまわすけど、情報を得ながら、来週は忙しいから来週は残業やるよって先に言っておくんですよ。
急に当日言っても、予定があるよって皆さん思うでしょ。
だから定時で上がれるときはもう時間を切っちゃう。それまでの計画を練って、その前に立てる。そういうことはちゃんと僕らやっている方だと思うので、その辺は不満ないんじゃないかなと思いますよ。
休みで出るってことはまずないようにしているし。いろんな調整を取ったりとか。仕事はのんびりやればのんびりやっちゃうんですよ。
その間、時間を中身を濃くやってもらっているから。そういうところがうちの長所でもあるんじゃないかな。
 
◆ 就活中の方々に何かアドバイスがあれば教えてください。
私、今こういうような鉄工場でこんな手になりながらやっていますけど、もともと僕ね、機械いじり嫌いなんですよ(笑)なんでこんなことやってるんだろうな、なんて思うんですけど、でも、今となってはやるからね。
だから、さっきの野球の話になるけど、自分の本当の好きなことが仕事になるとは限らない。ただ、続けていくことで何か必ず得るものがある。そのなかでいろいろ引っかかることもあるんだけど、ぜひ諦めないでまず続けてみてくれないかなとは思います。
で、その都度さっきも言ったように、いろんなことが必ず必然であるので、いろんな出会いがあったら必ず大切にしてほしいし、いろんなことでも先延ばしにしないで、すぐ、今、今やってほしい。ていうことがひとつ伝えられることですね。
 
◆ 現在の従業員の方に一言お願いします。
くどいですが、与えられた今を一緒にがんばりましょう。
誇りを持って。
僕らもね、今下請けみたいなことやっていますけど、でもよくよく考えれば大企業だってある意味下請けみたいなもの、僕らの下請けみたいなものですよ。
下請けには下請けなりの誇りを持ってね。だって僕らがいなきゃ成り立たないんだもの。
そういう誇りを持って、卑屈になることはないから。
絶対評価してくれるところは必ずあるから、それを信じて一緒にがんばりましょう!

◆ あなたにとって『社長』とは?
まず、決断をするのが仕事。いろんな決断があるじゃないですか、その繰り返しですよ、毎日。
さっきの従業員を解雇することもそうだし。苦渋の決断もあったり、良い決断もあったりするんですけど、でもそれ全部、決断の連続ですよね。
それをするが為には、やっぱりいろんなこともやってこなきゃですね。
20人解雇するっていう決断をした時もそうなんですけど。それだからこそ、謙虚に自分自身がいろんなことを吸収して学んでいかなきゃならないかなと思います。あとは常に健康でいること。僕のポリシーは、朝必ず一番最初に来て、一番最後に帰るってことだから。何があっても。ただ、いろいろあってできないときもあるけど、朝は必ず一番最初に来ています。会社開けるのは僕だし。で、閉める時はたまに妹に任しちゃう時もある(笑)それはね、いろいろ会合があったりとかしますから。やっぱり時間は、まぁ遊んでいるように見えるかもしれないけど、最初と終わりはきっちりやります。
 

 
◆ 今後の夢や目標を教えてください。
これも難しいんですけど。まずは、リーマンショックも含めてその前から、グローバルなんて言われた時代から失われた20年があるんですけど、それを取り戻す。絶対。それも含めて、今いろんなところで攻めていることもある。
まぁ従業員の数もそうですけど、さらに発展していきたいなと思っています。元に戻るかどうかわからないけど、まずそれをやったうえで、こういうこと(マグネシウム製品加工)も含めて、可能であれば自分で売りたいな(笑)いろいろ考えてね。
マクルウさんの力を借りて、これ今マクルウさんの名前なんですけど、最終的には別のものとしてなにか自分で売りたいな。自分の鈴木製作所でなにか売れればいいかなと思っています。
ただ、さっき言ったこの辺(スポット溶接・バレル研磨)はもう下請けのプライドを持って、やってやるぞと(笑)やってやってるなんて、そんなタカビーなことは言えないけど、誇りを持ってやらないとね。
いろんな社長さんが素晴らしいこと言っているけど、僕らの業界だとね自分の夢を語る人なかなかいないんです。現実に飲まれて、現実を知りすぎているから。
まぁ、作りたい。自社製品を作りたい。メーカーになりたいなってことですね。一気には無理ですけどね。まだまだコツコツやっていきますよ。
 
 

鈴木 髙史 ( すずき たかし )
有限会社 鈴木製作所/代表取締役
◆ 会社概要 ◆
所在地  静岡県富士宮市宮原262-1
TEL  0544-27-8175
設 立  1980年
事業内容 スポット溶接 バレル研磨 HW 梱包

 

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