インタビュー

有限会社エージェントうさみ 代表取締役 宇佐美健介【前編】

 
 
◆ 自己紹介をお願いします。
有限会社エージェントうさみ 代表取締役の宇佐美健介です。
私は静岡市で男3人兄弟の次男として生まれました。 幼少時代は、服織小学校、服織中学校、静岡南高等学校へ進み、東洋大学に行きました。大好きな祖母の死に目に会いたかったので、大学卒業後はUターンで静岡に戻って働きたいと思っていました。大学卒業後は静岡の建設会社に入社し営業として働いていました。結婚後、妻が長女だったこともあり富士宮に来ました。それと同時に、義父が保険代理店をやっていましたので、いずれは後を継ぐようにということで保険業界に入りました。 平成10年に保険業界に入り、平成12年に独立をして自分の保険代理店を立ち上げ、平成14年の10月1日に義父と一緒になり、法人設立をしました。
◆ ご自身をどんなタイプの人間だと思いますか?
O型なので、大雑把な人間だと思います(苦笑)
『パレートの法則』『2:8の法則』を大切にしています。細かいところまで掴んでいくと掴みきれなくなってしまうので、全体を見て、大事なものの2割を見つけて掴むことを心掛けています。

 
◆ どんな事業をされていますか?
損害保険と生命保険を取扱った保険代理店を行っています。
主には三井住友海上で、その他にも複数社取扱いをさせていただいています。 具体的な仕事の内容は、自動車保険や火災保険、生命保険の販売を行いながら、事故があったときの対応や、お客様のご要望に応じた商品設計や契約内容の変更などを行っています。中でも主に取り扱っているのは、中小企業向けの保険になります。 保険代理店の業界といいますと、最近はネット販売や通販・来店型ショップも増えていますし、スーパーや家電販売店での取り扱いなども増えています。
――― 最近CMでもよく見ますよね。
我々は保険のプロというところをより深めていくために、複雑で分かりにくい保険を取り扱っていかなければ生き残っていけないと考えています。分かりやすくて簡単な商品は、ネット販売等の非対面募集に流れていくと思います。より専門性が高く複雑で分かりにくい、中小企業の保険を主に取扱いさせていただいています。中小企業の経営を妨げる様々なリスクを発見し、そのリスク対策を保険を中心に行っていきます。中小企業で発生する事故やトラブルは、民法や商法だけでなく税法や労働基準法といった、各法律知識等の幅広い知識が求められます。
――― 『くらしのほけん110番』とありますが、警察署の前にあるからですか?
弊社の経営理念の
我々は、相互扶助の精神を持って、人と人とが助け合い支え合う、安全で安心な地域づくりを目指します。
の中にある、“安全で安心な地域づくりを目指します”という部分で、やはり安全で安心な地域にする為に一番関わってくれている方々って、警察の方とか病院の方とか消防の方とか、市役所の方ですとか、そういった方々になると思ったので、その施設に近いところで働きたいと思っていました。そんな中でたまたま警察署の前に良い場所を見つけていただいて、昨年7月に今の場所に事務所を新築し移転しました。今現在、自分も含めてスタッフ9名で働いています。
◆ どんな学生時代でしたか?
小学校3年生から地区のソフトボールがあったので、ソフトボールを始めました。その後、軟式野球を始め、中学校では野球部に入りました。ずっと野球生活だったので、高校では野球を辞めてしまいました。それからは、休みの日は自分の自由なことを好きなだけできるという高校生活でした。でも実際に野球をやらなくなると、今度は逆に野球がやりたいって思うようになってしまって・・・。結局、草野球チームを作って、野球をやってました(苦笑) 他には、小学生の時から釣りも始めました。主にアユやヤマメ、フナなどの川釣りやヘラブナ釣り、バス釣りにもはまりました (笑)

――― 自分の興味のあることにアクティブに活動されてる感じですね。
私の叔父がサバイバル系の人で、海や山、とくに近くの藁科川には毎週のように連れて行ってもらっていました(笑)
伊豆大島の自然の中で暮らしていた叔父でしたので、小学1年生の時に大島の叔父のところに遊びに行ったときは、大島の自然の中で魚を銛で突いたり、貝や海藻を取ってお味噌汁を作って食べたり、叔父が崖から海に飛び込んでサザエを取って来て、サザエのつぼ焼きを食べたりとか、とにかく自然の中で遊ぶことを教えてもらいました(笑)
 
――― そういう方がいらっしゃるとまた、影響というか、いろいろ経験を積むことができて楽しいですね。
そうですね。
叔父のおかげで、自然の中で生きていくことを学んだ感じです(笑)
◆ プライベートでは主にどのようなことをされていますか?
今は、ソフトボールですね。実は社会人リーグでピッチャーをやっています。強くも無く弱くも無くっていう感じですね。チームメイトがやさしくて、みんな良い人ばかりなので、とても楽しくやらさせてもらっています(笑)
また、娘も小学校から結局大学まで、ずっとソフトボールをやってくれていましたので、とても楽しい時間をもらいましたし、沢山の経験の中から多くの大切なことを学べました。つい最近も、中小企業家同友会の支部対抗ソフトボール大会がありまして娘とその友達とも一緒にプレーしました。ソフトボールに出会ったから、こんなに永く娘と一緒の時間をもらえたんだと感謝しています(笑) 他には、家で飼っている愛犬の「いち」です。黒柴で11歳になるのでもう大分老犬です。あと何年生きていられるか分からないと思い始めてから、いちを連れて(自分のトレーニングも兼ねて)山に行ったりしています。

それ以外にも、ダイビングをやっています。先輩から誘われたのがきっかけなのですが、海の中って本当に音が何も聞こえないのです。当たり前の話ですが、実際に体験するとびっくりです。普段の陸上生活では、色々な音が聞こえますよね?でも海の中の時間は、そんな雑音から解放された癒しの時間があるのです。そして潜ったときの海の世界は、全てが色鮮やかで無重力、まるで宇宙にいるような感じです。
 
――― 体感も違いますし、普段の見えている世界とも違いますしね。
はい。ダイビングをやっていると全く別世界という感じです。日常生活から解放されて、ストレス発散になるというか、また新しい自分の世界が広がるというか。
 
――― 本当にアクティブに動かれているんですね。
そうですね。 あとは、ゴルフもやります。決して上手くはないですけど。でもゴルフはお付き合いが浅い人と一緒に会話を楽しみながらプレーができて、仲良くなるきっかけをつくってくれる良いスポーツだと思います。 人とお付き合いできるようなスポーツや趣味は、出来る限り経験しておきたいと思っています。
 

 
◆ 大切にされているビジョンやポリシーは何ですか?
保険の仕事をやっていると、「良い人」がはっきり分かるんです。例えば自動車事故を起こしてしまった時に相手の人を思いやる人、誰もがみんな事故を起こしたくて起こすわけじゃないからと言って相手を許す気持ちがある人。お互いがお互いのことを思いやる社会っていうか、良い人が報われる社会っていうか、良い人が増えていく社会になって欲しいと思っています。 ポリシーは色々ありますが、「決して諦めない」っていうところですかね。常にチャレンジしていきたいですね。
◆ 富士宮で起業された(会社を引き継がれた)きっかけ・理由はどんなことですか?
義父に結婚の挨拶に行った時、将来的にこの仕事を継ぐ気があるのかと聞かれて、『あります』って答えました。それがきっかけです。この業界に入って義父の仕事を継ぎ、家を継いで宇佐美家を守る。それが自分の与えられた使命だと思っています。
◆ 会社がここまで成長できた理由はどんなところにありますか?
保険業界に入り研修制度がスタートして6カ月が経過したところで、成績が同期入社のうちワースト2位になりました。知り合いのいない富士宮で、どうやって保険販売をしていけばいいのか悩みました。毎月の給料では生活できず貯金を取り崩していきました。辞めようかと悩んでいた時に友人から「石のうえにも3年」と言われ、3年まではやってみようと思いました。そして、優績者との出会いの中で「中小法人の飛び込み営業」について学び、同じことをがむしゃらに実践しました。そこから少しずつコツをつかんで行って、今があります。研修生を2年で独立して3年目には、義父と同じくらいの売上の規模になりました。
そこから自分の中で仕事のやり方や方向性について考え始めていくうちに、家業から企業になりたい。人を採用して組織化して、富士宮で一番の保険代理店になりたいと思うようになりました。しかし義父は、自分が引退して会社を受け渡すまで、安全にいきたいという思いが強かったんです。そこから段々と意見が合わなくなって、いろいろ摩擦も起きて非常に悩んでいた時期がありました。その時ちょうど、有限会社アサギリの簑さんに紹介していただいて、中小企業家同友会に入りました。中小企業家同友会というのは、経営者が学ぶ会なんです。『よい会社をつくる、よい経営者になる、よい経営環境をつくる』という3つの目的に向かって活動する全国の中小企業家の集団です。 同友会に入会して、活動を進めていくうちにこの「3つの目的」について深く考えていきました。よい会社ってどんな会社なんだろう?よい経営者ってどんな経営者なんだろう?よい経営環境をつくるって一体どういうことなんだろう?

その答えを活動の中から学んでいきました。とくに経営理念をつくる過程で大切なことを学びました。 会社の目的とは?自分自身の生きる目的とは?地域に必要とされる会社とは?人から必要とされる人とは?ということについて深く考えたことが一番大きかったです。
それまでは高い収入を得て良い生活をしたい。そのために売り上げを増やしたい、会社を大きくしたいと思っていました。そして、そのために自分の指示通りにスタッフが仕事を手伝ってくれて、それが一番生産性が伸びて会社が成長していくと勘違いしていました。自分のことしか考えていない勝手な経営者です。経営理念をつくり、初めて本当の会社の目的と自分の存在価値がわかりました。自分が何のために存在して何のために生きるのか。会社の存在価値と会社の本当の目的を見つけた時、進むべき道が見えました。 社員一人一人が活き活きと働く会社にならなければ、会社の目的にたどり着くことはできない。みんなが会社のことを自分のこととして考える会社。そのために一人一人が常に考える。 一人一人が会社のことを考えて、 "エージェントうさみ"のやり方をこういう風に変えたらいいんじゃないかって考えられるようになったら、会社は大きく変わると思います。社員が自主的に考えられる会社というのが、自分の目指す会社だということがわかって、そこから社員の意見を聞くようにしました。

 
――― 具体的にどんなことが変わりましたか?
まず、社員の意見を聞くために成長戦略会議をスタートしました。経営計画を立てて、目標達成の為の経営戦略を考えました。具体的な取り組みや活動を考えて実践していく中で、PDCAを回していきました。 みんなにどう?どんなやり方がある?これどう思う?って聞くようにして、考えてもらうようにして、そうやってみんなが考えて良いと思ったことを実践する。実践してもし失敗したら、それがなぜ上手くいかなかったのかをみんなで考える。次にどういう部分を改善して、どういう風にやっていけばいいのかを、またみんなで考えるんです。経営のビジョン、計画・目標・戦略を社員と一緒になって考えていくことで少しずつですが社員が意見を言ってくれるようになりました。と自分では思っています(笑)
昨年事務所を新築移転したことと、設立15周年という節目ということで経営指針の発表会をやりました。経営計画を作って、経営理念・経営ビジョン・戦略を計画書として作成し、弊社のスタッフと取引先のメーカーさんや業者さんを招いて発表したんです。今後の5ヵ年計画を発表し、5年後・10年後のビジョンを皆様に聞いてもらいました。社員一人一人が、経営計画実行の為の自己目標を発表しました。そうすることで会社の進むべき目標がしっかりできるので、社員もその目標に向かって自分がやるべき役割を考えてくれるようになりました。
――― 意識もまた変わりますよね。
最初は「経営指針の発表会って何?」とか、「やる意味が分からない」とかって言われました。なんでやる必要があるの?という感じでした(苦笑)でも、その意味も必要性も説明し実践したことでみんなの意識が少し変わったと思います。同友会では、会社の成長は「共育」にあると考えられています。社長が社員と共に考え、そして共に育つことです。
戦後の復興の時に、労働争議が次々と起こりストライキとなって中小企業が倒産するという時代がありました。その中で多くの経営者が、どうやったらその働く労働者と経営者、従業員さん達と会社側が同じ目標に向かってやっていけるのだろうということを真剣に向き合って考えた時期に創られた組織が同友会です。その同友会が労働者と経営者のお互いの立場を考え、お互いが幸せになる為の経営をどう進めていけば良いのかを考えて実践してきました。その積み重ねられた知識と経験を学んでいくうちに、社員がいきいきと働いてくれること、社員が自分の会社が良いと思ってくれることで初めて、お客様も弊社で良かったと感じてくれることに繋がると思いました。

――― そうですね。ただお給料の為に働くわけではなくて、自分達が意識を持って働くことで、会社の為にも自分の為にもお客様の為にもなりますしね。
ぐるっと富士宮の社員のみなさんも、こうやって取材して、この富士宮という地域を紹介すること、富士宮をもっともっと情報発信していくこと、子供たちに富士宮を残して伝えていきたいという思いが富士宮の発展に繋がっていくこと。子供たちがそれをみて「富士宮ってこんないいとこがあったんだ」「こんな頑張っている経営者がいるんだ」「富士宮って良いところだね」って思ってくれることが、仕事のやりがいであり、生きがいだと思います。
目指す姿は、エージェントうさみが地域に必要とされる会社になることです。今、多分エージェントうさみがなくなっても誰も困らないと思うんです。でもエージェントうさみさんがなくなると困るよ。エージェントうさみさんの保険だと、こういう風にやってくれる。こういうところが他の代理店さんと違う。だからエージェントうさみさんに頼んでるってお客さんに言ってもらいたい。じゃあ、どういうことをやっていけばよいかをみんなで考えていける、そういう会社を目指したいと思っています。